† of Human~人の怪異
「そんな目で……結構失礼ですね、小名木くん」

と、そんな和幸の視線に、上野は後ろ手で鞄を持ち、拗ねた。

「私はいたいけな女子高生で、仮にも命の恩人なんですよ? その乙女を前に、そんなに怯えるなんて」

「あ、ご、ごめ」

「謝ってすむなら教会は不要です」

「?」

よく、意味のわからないことを言った上野は、すとんと突然、腰を下ろした。

たおやかな眼差しが、和幸を見上げてくる。

「座ってください」

「は……?」

「お話しましょう、小名木くん。気になって気になって、仕方ないのでしょう?」

彼女が、なにをお話しましょうと言っているのか、和幸は無論、即座に理解できた。

それが、あの教室で見たもの同様、頭のイカれた高校生のたわ言に聞こえる内容であると、予想もできた。

もちろん、あの光景を否応なく思い出させられることも。

「前もって言いますけど、拒絶は認めませんよ」

と、こちらの心中を察したのか、単に自分は思っていることが顔に出やすいのか、釘を刺される。

和幸は、致し方なく、腰を下ろした。
< 45 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop