† of Human~人の怪異
「なあ母さん」

「なにさ」

と、気付いたら、玄関のすぐ真横にある流しで手を洗っている母に、訊ねていた。

「俺が死んだら、やっぱ悲しむ?」

「はあっ?」

当然のように、頓狂な声が返ってくる。

きゅ、と水を止めた母が、タオルで手を吹きながら、寝る時以外は開けっ放しのふすまを抜けてやって来る。

眉間に、しわが寄せられていた。

「バカなこと言ってんじゃないよ、もう。そんなの、悲しむにきまってるでしょうに」

その表情な、少なからず父が死んだ時のものと、似ていた。

「そうだよな。やっぱそうだよな」

「そうよ。なに? なにかあったの?」

「いや、別に」

「本当に? ほんとになんにも?」

見つめてくる母の目に、今まで何度味わったことか、『心配』という色を見る。

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