† of Human~人の怪異
『いやいや、僕は君を好きだよ、うん。とっても有能だからね。頼りにしてる』

「だからやめてください」

反論しつつも、区長の言葉につい、頬が緩む。

言ったそのまま、照れるという意味もある。

そして同時に、好きな異性から評価される喜びの意味も、ある。

区長は、気付いていない。

剣振るう教会の使徒である己が、

学校では『図書委員』という肩書きぐらいしか目立たない一介の女子が、

上野楓という人間が、実年齢もわからない区長に恋心を抱いているなど、知るはずがない。

お互いに知っているのは、顔と、名前と、その関係。上司と部下。

実際に顔を合わせることはあっても、それはあくまでも教会という中間があってこそ。

プライベートでは、一切ない。
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