† of Ｈuman～人の怪異

どうしたんだといえば……と、心の中でぼやきながら、和幸はシャーペンをくるりと回転させた。

そのままほんの少し、桜庭の後ろへ目をやる。

自分の横の席になる女生徒は、上野楓。図書委員を務めている、純朴という言葉が似合いそうな、物静かな少女である。

肩上で切り揃えられた黒髪と銀縁の眼鏡が、彼女のキーポイント。本を読んでいるところしか見たことがない彼女は今、しかし、和幸の中のイメージをがらがらと破綻させる勢いで、険しい顔をしている。

苦虫を噛み潰したようにしわの寄った眉間、すがめられた眼に、ペンを握るには力の入り過ぎた拳。

今までふわふわとしていたなにかが、急激に冷えて堅く硬く塗り替えられたような……ある意味では、委員長よりも違和感を醸し出していた。