† of Human~人の怪異
さすがに四時ともなれば、起きているのは電線に止まる鳥、道端をうろつく猫くらいか。
校舎の周辺には警察のテープが張られているものの、人影はなかった。
暗中、校舎の一角がものの見事に吹き飛んでいるのを見ると、磨り潰され飲み込まれ、赤く黒く蹂躙された光景を、思い出さずにはいられない――それはたしかだ。
たしかだが、自分にはまったく取り乱す気配が見られない。
思えば最初から自分は、桜庭や上野の行いを見て驚きはしたものの、狂いはしなかった。
あの時、泣き叫ぶか、狂気に喚くかしていたほうが、人間らしかったのではないだろうかと思う。
しかし、自分が悲鳴をあげたのは、あの場景ではなく降ってきた瓦礫に対して。
とことん、ずれている。
狂っていたのは桜庭紅蓮。
叫んでいたのは上野楓。
ならば、自分は?
小名木和幸は、あの場でなにをしていた?
校舎の周辺には警察のテープが張られているものの、人影はなかった。
暗中、校舎の一角がものの見事に吹き飛んでいるのを見ると、磨り潰され飲み込まれ、赤く黒く蹂躙された光景を、思い出さずにはいられない――それはたしかだ。
たしかだが、自分にはまったく取り乱す気配が見られない。
思えば最初から自分は、桜庭や上野の行いを見て驚きはしたものの、狂いはしなかった。
あの時、泣き叫ぶか、狂気に喚くかしていたほうが、人間らしかったのではないだろうかと思う。
しかし、自分が悲鳴をあげたのは、あの場景ではなく降ってきた瓦礫に対して。
とことん、ずれている。
狂っていたのは桜庭紅蓮。
叫んでいたのは上野楓。
ならば、自分は?
小名木和幸は、あの場でなにをしていた?