† of Human~人の怪異
「僕は今日、晴れて人間を卒業した。自分の力に目覚めた。桜庭紅蓮は、この僕は、自分を誇れる境域に達したんだ。化け物なんて陳腐な言い方しないでくれよ。僕は超常者だ」

上野楓が言っていた。

本質に触れると、飲み込まれてしまう。その本質を行うばかりの装置になる。

今の桜庭がそうならば、彼の本質はなんだろうか。そんな悠長なことを、和幸は考えた。

「だけどね小名木くん、祝福されるだろう僕の覚醒を、まさか凶行扱いする人がいてね。あの場にいたんだ、知ってるだろう。

上野楓。彼女に、この僕が、否定された。この僕が、桜庭紅蓮である、この僕がだよ? 信じられないね。これほど屈辱的なことはないさ」

わざわざ繰り返し、言うことだろうか。

「それでね、僕は上野さんを葬ってあげたいんだ。僕がどれだけすばらしいか、桜庭紅蓮という存在を噛み締めさせて、それはもう脳髄にまで染み込ませてやりたいんだ。僕という、超常を。この手で」

和幸は思う。

僕が、僕が、僕がとうるさい。
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