† of Human~人の怪異
なぜか、恐怖はない。恐怖よりもむしろ、この土壇場で、頭が冴えてきている。

意味などないのに、必要もないのに、和幸の頭はどんどん明瞭になっていく。

情報解析が、一気呵成に加速していく。

そして、

「あー、わかった。わかったぞ」

と、ひとつ、自力で理解していた。

にやりと、委員長を指差してやる。

「お前の本質って、『傲慢』ってやつだろ? どーりでさっきから僕が僕がうっせーと思った。この自信過剰の、自惚れ野郎」

「うぬ、ぼれ……?」

彼の動きが一瞬、ぴくりと震える。

「自惚れ? それ、僕に、言っているのかな……? ふ、はは……!」

そしてその単語が、桜庭へ確実にひびを入れたようだった。

大蛇を生やし連れた超越者が、屋上から跳ぶ。

体が、蛇の頭が、夜空から降ってくる。

「君が僕を! 自惚れてると言えるのか! ただの人間の君がっ!」

頭に血が昇ったのか、左右から蛇が差し向けられる。

刹那――
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