† of Human~人の怪異
もっとも、

「あああっ、イラつく! 上野さん、ほんとにイラつくよね、君って!?」

顔の筋肉を痙攣させる桜庭も、瞬時に蛇の頭を再生させてしまったが。

「文句は聞きません、桜庭くん」

臨戦として、上野楓は一振りを宙へ放る。

連なって、地面に突き立っていた八本も、宙へ浮かび上がる。

手元の一本が正眼、宙の九本が刺突を構える不思議な剣術体勢が、整う。

「下がってください、小名木くん」

と上野が前を向いたまま、小言を言った。

「まったく避けないなんて、なに考えてるんですか」

和幸は、明瞭快活となった頭で、はっきり簡潔に答える。

「いや、上野さんが助けてくれると思った」

「達観したようなことを言わないでください。邪魔ですよ」

そして少年の前で二度目となる、超越の戦いが、幕開いた。

上野楓が、メガネを外す――。
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