† of Ｈuman～人の怪異
空中、低い月を背景に、少女と少年が交錯する。

「僕に屈しろ、上野楓！」

「できません！」

蛇のアギトが、まるで食虫植物のように、上野へ殺到した

和幸は、実際に蛇の殺到を食らってはいない。

しかし、上野から見たら、投網のような形で蛇の軍勢が迫っているだろうと、予想した。

まさに、視界一面が蛇の赤々とした口腔に埋め尽くされているだろう。気色悪い。

が、和幸は、心配はしない。

上野の剣技には冴えがある。黒い刃を白銀にまで洗練させる、絶妙の斬り払い。

そして、たった一本の剣しか持たない上野が、秒の間に見事、桜庭とすれ違っていた。

すでにその段階で、桜庭の蛇は十頭が十頭、首なしになっている。

円を描くように数度、無駄のない斬撃が、蛇を圧倒していた。

熟れすぎた桃のように、蛇の頭がグラウンドに落ち、腐り、また血溜まりになった。

グラウンドは、すでに赤黒い。
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