† of Human~人の怪異
それが、
「この蛇、鬱陶しいからしまえ」
べちんと、蛇の鱗を真横から叩いた。
「ぁ」
と、思わず、あまりに間抜けな光景に、上野は度肝を抜かれた。
あれだけ狂暴だった蛇が、大して力もこもっていないビンタで、簡単に弾き飛ばされたのである。
それは、和幸の力が蛇を伸したのではなく、単純に、桜庭から力が抜けていただけだった。
ずぅんしゃ、という重く鈍い音をあげて、蛇――もといは桜庭の腕が、脱力を示すように地に落ちる。
桜庭は、本当に腑抜けていた。
「なん、なんだよ……小名木くん……君、なんなんだよ……?」
そして、十に分かれていた蛇が収縮し、人間のそれへ戻る。
虚脱と、敗北感が、桜庭紅蓮の顔に、まざまざと浮かんでいた。
(そんな、まさか、ただ言葉だけで)
上野は、信じられない。
小名木和幸が、桜庭紅蓮の本質を抑圧し、さらには正気に戻したのである。
粛正の必要が、なくなっていた。
釈然としないまま、上野は剣を手放す。意思ひとつで、粛正の武器は消えた。
「この蛇、鬱陶しいからしまえ」
べちんと、蛇の鱗を真横から叩いた。
「ぁ」
と、思わず、あまりに間抜けな光景に、上野は度肝を抜かれた。
あれだけ狂暴だった蛇が、大して力もこもっていないビンタで、簡単に弾き飛ばされたのである。
それは、和幸の力が蛇を伸したのではなく、単純に、桜庭から力が抜けていただけだった。
ずぅんしゃ、という重く鈍い音をあげて、蛇――もといは桜庭の腕が、脱力を示すように地に落ちる。
桜庭は、本当に腑抜けていた。
「なん、なんだよ……小名木くん……君、なんなんだよ……?」
そして、十に分かれていた蛇が収縮し、人間のそれへ戻る。
虚脱と、敗北感が、桜庭紅蓮の顔に、まざまざと浮かんでいた。
(そんな、まさか、ただ言葉だけで)
上野は、信じられない。
小名木和幸が、桜庭紅蓮の本質を抑圧し、さらには正気に戻したのである。
粛正の必要が、なくなっていた。
釈然としないまま、上野は剣を手放す。意思ひとつで、粛正の武器は消えた。