蒼唯的痛冷な瞬間【本サイト限定作品】
ヒヤッと
社会人生活を迎え、半年目のこと。
仕事関係の人と数人で、夜、居酒屋で食事をしようという話になった。
学生の頃、サークル仲間やバイト先の人々とたびたび酒を飲みに行っていたし、体質なのか、私はどれだけアルコールを飲んでも酔わないタイプだった。
(余談だが、アルコールに強いタイプは麻酔も効きづらいらしい。真実はいかに…?)
ゆえに、自分は決して酒にのまれない人間だ、どれだけでもかかってきやがれ、と、酒に対し妙な自信を見せつけていた。
でも、結果から言うと、それはカクテル限定の話だった。
『居酒屋』と言っても、様々な店がある。
ビールや焼酎以外にも、カクテルやサワーなど、種類豊富な酒を置いている気楽な店しか行ったことのなかった私は、その日初めて、セレブしか来なさそうな料亭風お堅い居酒屋に連れていかれたのである。
メンツの中でもっとも下っ端の私。慣れない店。やや緊張しつつ、『酒を飲めばリラックスできるさ』と、余裕の面持ちで出される酒を待っていると、ビールしか出てこない。
その店にはカクテルなどなく、焼酎やビールしかなかったのだ。
ビールは苦手だけどそんなこと言えない。とりあえず、飲んどこう。酒に強いんだから、害はないはず。……なんて、早計だった…!
……数十分後。私は、なぜかトイレでベロンベロンになっていた。オノマトペ、間違ってないはず。
なぜ、ここにいる? 今まで座敷の掘ごたつ式テーブル席に居たはずだが……。
ビールの飲み過ぎで、半時分の記憶が飛んでいた。
『泥酔の方の入場はお断り』と注意書きのある銭湯に連れていったら、即拒否されるような状態で、私は、普段しゃべらないようなことを延々と話していたそうだ。トイレで楽しそうに。
翌日、頭痛すらしなかったのは奇跡だと思った。
自ら黒歴史を増やしてしまった、いま思い返しても恥ずかしい出来事である。
もう二度と、あの店には行かないと誓った。
そして、アルコールに強いという自信は、その後、木っ端みじんに砕けた。