高校生恋愛*~初めての気持ち~
そうして、私はバトンを受け取った。それからは、ほとんど記憶がない。



ただ、何があっても走りきらなければならないという気持ちがあったのかもしれない。


何が何でも、白組を抜かさなければならないと思っていたのかもしれない。


靴が脱げて、小石でちくちくする地面を、太陽の光にじりじりと照らされ続ける地面を、



私は走った。



----そして、今日もあの時のように一生懸命に走っている。


でも、あの時と全く同じではなかった。あの時は、友達のためや、赤組のために走っていたが、今は自分のために走っている。


どんどんと落ちていく夕日。この夕日が私にカウントダウンをしているかのように、今までにないくらい赤く光っていた。


まだ、まだ、まだ、間に合うだろう?まだ、大丈夫だろう?今、やらなきゃ、駄目なんだよ。もうちょっとだけ待ってくれ。なんてわがままかな。でも、お願い。お願いです。神様。どうか、翼の元まで行けますように。



そう願いながら、私はもつれる足を必死に動かし、走った。そのとき、ふと悪い考えが頭の中によぎった。


“今頃、舞ちゃんと翼は、病室で何を話し、何で笑いあってるんだろう。”



その悪い考えは、まるで体全体を太いロープでぐるぐる巻きに縛られたように、私の体を不自由に、動きを重くさせた。




そんなこと、考えてたって意味ないよ。舞ちゃんがいるのは、知ってる。相思相愛ってことも。知ってる。知ってるんだよ。だから、だから。




「つ…ばさぁ」


小声で彼の名前をいってみる。もう足はいう事を聞いてくれなくなっていた。



「走れよ。この足。もっと頑張れよ。まだ、いける。もうちょっとなんだよ。あと少しで、翼のところに、いけるんだよ。大丈夫。もう少し頑張ろうよ。ねえ。」



そういって自分の足をパンパンとたたいてみても、いう事を聞いてくれなかった。



足は、まるで私のものではないかのように、ちっともいう事をきいてくれなくなり、しまいにはがくんと、地面にひざをついてしまった。



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