鮮烈な赤に酔う
私は首をかしげてから、珊瑚に冷静に問いただす。
「なんで、そんなこと言うの?」
「アンタは途中生だから知らないだろうけど――――『あの人』は、女に名前を呼ばれるのを嫌ってるのよ。そりゃもう、とってもね」
眉間にしわを寄せながら、珊瑚は前髪をいじる。焦った時の癖だ。
「で、許可はもらってるの」
「……東雲先輩が、『敬意を込めて呼べ』って言ったから、こう呼んでる」
「……はぁ、安心」
かなりの間があってからの、安堵のため息。
心なしか、周りの空気も緩んだような気が、した。
――――違う空気をまとう集団も、なかにはあったみたいだけど。
私はそれにはまだ気づいていなかった。