鮮烈な赤に酔う
先輩たちがお帰りになった、私だけが残る屋上。
あまりの出来事にわたしですら驚いた。
「わたし、一応ボケ担当なんだけどなぁ……」
「くっくっ……」
呟いた言葉に、あの特徴的な笑い声が返ってくる。
振り向くと、屋上の貯水タンクの横に赤い人影があった。
「……ッ東雲先輩!」
「よう、藤原。元気そうで何よりだ」
青空の元、綺麗な赤い髪を風に遊ばせる。
だるそうに着た制服のズボンに片手を突っ込んで、軽く片手を上げる彼。
それだけで画になってしまうのだから、素敵なものである。
「いつからそこにいたんですか」
「あ? 最初からいるに決まってんだろ」
「あ、もしかして私のことが心配で来てくれてたんですか? うれしー」
先輩はにたりと笑って言う。
「あー、そうだよそうだよ。てめぇが心配できてやった」
「先輩、ここは『違ぇ、偶然だ』とかいって頬を染めつつ、そっぽを向くんですよ」
「藤原ぁ、てめぇもここは『ありがとうございます』とかいって赤くなればいいんだよ」
「わたしにそんなスペックあるとでも?」
「そりゃねぇな」
ときめかないのが私たちの残念なところです。
非常に残念ですね(棒読み)