鮮烈な赤に酔う
「葉月、あんた積分まで予習してるの?」
前の席の珊瑚が焦ったように話しかけてくる。
私は、にやぁっと笑ってやった。
「大学のベクトルまでできるよ」
珊瑚が世界の終わりのような顔をしたので見ものだった。
*
「藤原さんって超頭いいんだねー!」
「えへへーありがとう」
「口調からしてバカっぽいのにー」
「おいこら今誰が言いやがった」
休み時間、私は可愛い女の子たちに囲まれるという天国にいた。
頭がいいとは便利なことだ。
今まで勉強してきてよかったー!!
「頭いいって言ったらさ、『あの人』また実力テスト500点だったんだって」
「あの人、って?」
「ほら、名前を呼ばれるのが嫌いな2年の先輩!」
「あぁ、東雲先輩かー。……あの人頭いいの?」
「そうだよ? イケメンで頭良くて、強くてお金持ちでしょ。完璧だよねー!」
「あははーソウダヨネー」
性格はクソがつくほど悪いがな。