鮮烈な赤に酔う





「今の先輩は、本気じゃないみたいなんで

魅力激減です」


真顔の私に、ぽかんとした顔の先輩。

なかなか見られない風景だと思う。


本気じゃない姿には、興味ない。

私が渇望してたのは、

血の中であれど、王の風格を漂わせる、

あの悠然とした赤の肉食獣。


どろりとした瞳の奥に見えた、あの炎が。

好きで、たまらないと思えた。


一度、あの鮮烈な赤に酔ってしまったのだから

あれじゃなきゃ我慢できない。



「先輩の本気の魅力、そんなもんじゃないでしょう。

魅せてみてくださいよ」


にたり、と。

肉食獣を狩るならば、私も残酷に、獰猛にならねばならない。








< 64 / 92 >

この作品をシェア

pagetop