鮮烈な赤に酔う
「東雲先輩、てか桔梗さん、私大変なことに気付きました」
「なんだよ」
「どうされましたか」
「一切の着替えを持っていません」
東雲先輩が軽く溜息を吐きだしてから、
桔梗さんに指示を出す。
「ほんとすみません。先輩も、桔梗さんも……」
「まあそんなことだと思ってたからいい」
「若様のご友人にしては、随分可愛らしくあられることで……
桔梗めは安心いたしましたわ」
おそらくまだ20代前半の桔梗さんは、その美しい顔をほころばせて笑う。
その姿が着物ということもあって、まさに正統派和服美人。
しゅんとしていた私と苦い顔の先輩ににっこりと笑いかけた。
「桔梗、そいつはどういう意味で言ったんだよ」
「いえ……最近の若様のご友人と言えば
着替えなんて持ってくる気もなく、妙に威圧的な女性が多くあられましたので」
身に覚えがあるのか、舌打ちをしたっきり何も言わなくなった先輩。
私の方も某美しい生徒会の方を思い出して苦笑いをこぼした。