鮮烈な赤に酔う





先輩がちらりとこっちを見て聞いてくる。

周りの人達がお酒を飲み始めたから少し賑やかだ。



「そうですよ。なかなかかわいいアパートですから自慢……だったんですよ……」

「気ぃ落とすなよ」

「先輩顔笑ってますけど、慰める気ないですよね」



にたにたした顔がまたかっこいいので非常にムカつく。

ふてくされた顔をしながら箸を進めていると、東雲先輩がぽんぽんと頭を撫でてくる。



「まあ、俺がすぐ解決してやるから。てめぇはそのアホ面晒しながら待ってるんだな」



周りがうるさいのに、先輩の声は私の耳によくなじむ。

こんなことばっかり平然と言ってるから、

周りの女の子が黙ってないんだよなぁなんて思いながらさらに乗った最後のコロッケに手を伸ばした。




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