鮮烈な赤に酔う
「言えよ、『怖かった』って」
どうして、わかるの。
東雲先輩は、ここに来た直後の私も知らないし、琥珀さんにだって私の朝の様子は黙っててもらったはず。
夕飯の時だって、そのあとだって、私はちっともそんな様子見せなかった。
空気を乱さないよう、まるで道化師みたいに振舞って。
自由に生きるために、少し変な子ねって言われるようなやつになって。
どうしてそれでも、私をそんなにまっすぐ理解しようとするの。
「やめて、」
「マフィアが来たんだ、怖がらない方がおかしい」
「私は、変な奴だから」
「違うね、てめぇは怖がること――いや、色んなことを制限されてきた」
「そんなわけない、私は自由に生きてきた!今までも、これからも」
「俺の目を見て、それが言えるか?」
ひ、と喉が詰まった。無理だ。
先輩の声が頭の中でぐるぐる回っている。
先輩のあの赤みがかった瞳を覗いたら、きっと全部暴露してしまう。