鮮烈な赤に酔う





【Kouga】



気高い、あまりにも。

今まで扱ってきた女とは何もかもが違う。

これまで、後暗い過去を持っていた女は何人かいた。

だがそれを知ってほしいかの如く俺に話しては、泣いて、結局は好きだのなんだのという話になった。

隠すことに慣れていて、しかもそれはそうそう見せてこない。

藤原は、今手負いの獣のように危うい。

見せろ、俺に。お前の底の心まで。



「誰になんと言われようと、私は自由であろうとします」



ひと押し、というところだったのにそれを簡単に許してはくれない。

ぎり、と火花すら散るような強い緑の瞳が射抜いてくる。

合わせてきた瞳は、是非を答えなかった。



「泣くことも、私が決めます。自由であることは、私自身が掴み取っていく。東雲先輩にだって、わかるでしょう」



するりと体を突き放し、俺の腕の中から出ていく。

やはり、すぐには捕まえられない。



「わかるさ、俺にはな」




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