夢見る死体

焦る貴女と、刃物片手に浴室へ向かう僕


貴女に不要とされるものなんて、僕にはなんの価値もない。潔く捨ててしまおう




さらさらさら、湯が溜まっていく


来たら駄目だ、向こうへ行ってくれ
貴女には醜い僕なんて見せたくない



ざばん、
これだけ湯があれば事足りそうだ
服はそのままに浴槽へ埋まる
顎にまで来るのはくすぐったい



初めに握ったカミソリで、片手首に勢いよく線をひいた


どっと汗があふれる。
熱い、血液の流れが痛いほどにわかる
湯が朱色に染まってきた



震える手でカミソリを放って、包丁の柄に触れた
貴女は無事に自宅へ帰れただろうか。ああ、こうする前にきちんと送るべきだったか


静かにならない利き手が、首に包丁を近づける
少し黙ってくれよ。定まらないだろ

ぐうと差し込んだところで、あまりの痛みに手が止まった



どくりどくりどくりどくりどくり
だらりだらりだらりだらりだらり



力の抜ける体に、揺れる視界。

まぶたがさえぎるその時、貴女の幻覚をみた
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