渚の平凡物語
「ここが職員室です」

 一晩経っても全然慣れそうもない相手に、職員室まで案内する。
 妙な時期に転校してきた割に、彼女自身に戸惑いや寂しげな顔は見当たらない。
 美人は度胸も持ち合わせているらしい。あたしは一生小心者で終わりそうだ。

「ありがとう。……失礼します」

 目が潰れるような笑顔を見せた後、颯爽と職員室へ乗り込んで行った。あたしには無理だ、成績で呼び出されることがほとんどだもの。

 やっとこ解放された喜びに、あたしは軽い足取りで教室に向かう。
 ちょっと考えればわかることだったかもしれない。彼女は善、あたしは悪。きっと此度のことは、罪深いあたしを悔い改めさせるための神様の試練か何かなのだろう。そのために彼女が来たんなら──

「初めまして、転校してきた御堂巴です。よろしくお願いします」

 まぁこうなるわな。

 腹違いで姉で女神でクラスメイト。
 神様マジで死ね。
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