渚の平凡物語

視界に入るらしいよ

 女神様ったらマジぱねぇ。

 どういつもりだか、朝から放課後、挙げ句の果てには部室まで押しかけられたあたしは、既にしおしおである。何か吸い取られたっぽい。生命力とか生きる気力とか。

 無意識なのか意識的なものなのか、人の吸着力が凄いのだ。むやみやたらと誰かを常に引き寄せる。
 姉は姉であたしにくっついたまま離れようとはしないから、当然誰コイツ、みたいな目を向けられる。

 あたしの平穏ライフが。
 特に目をかけられることもなかったが、それ故に誰かに目を付けられることもなかったあたしの平和な日常が。
 この、KY女神に崩されそうになっている。

 悪意はないと思う。でも、この空気読めなさで今日一日で多くの人の視野に入ってしまった。
 そうなると、チキチキポーン、とあたしの存在価値を計られてしまう。
 容姿、性格、人徳、その他もろもろ。放っておいて欲しいのに、多分それは叶わないだろう。姉が気になる限り。

 悔しいけれど、この空気読めない女神と一緒にいてもいい人物か? 全く望まぬそれを勝手に計られた気がする。そして不合格だった気が。
 実際、「何で一緒にいるの? え、姉妹? 見えなーい」と派手なお姉さんたちにキャッキャ嗤われた。あたし何もしてないのに。何もしてないのに!

 多分彼女と一緒にいることのメリットを脳に無意識に刻んだ筈だ。
 あたしは絶対望まないが、幾人もの生徒や教師が彼女を強い眼差しで見ていた。勝手に仲良くなってくれと思うが、彼女が一番親しげに話しかけるのがあたしで、興味深そうに話を聴くのがあたしだけだ。邪魔に見えてもしょうがない。

 ハッキリ言おう。
 こんな人と仲良くなるのは望んじゃいねぇ。むしろ永遠に遠い存在でいたい。

 皆さん、あたしたちは無関係です。
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