渚の平凡物語
「あー、あー、あー、あの女子生徒な。やけに顔良いやつ」
「はぁ……」

 最近そればかりなので顔が暗くなる。
 何であたしばかりが引き合いに出される。一緒にして欲しくない、絶対。

「その人の信者がもう凄くて……」
「ぶはっ、信者か」

 笑いごっちゃない。
 その信者に迷惑かけられてるのだから。

「姉がまたKYで、余計怒らせてあたしがいびられるというパターンで」
「な、なるほどな」

 相槌を打ちつつ肩が震えて目が笑っている。どんどん信用メーターが下がってるんだが。

「家ではあたし以上に娘になっちゃって」
「ぶふぁっ」
「…………」

 おい。お前本当に相談に乗る気あんのかコラ。それで養護教諭か。

「くっくっく……おっまえ、面白ぇなー!」
「あたしは超絶不愉快です」
「ふふっ、その受け答えが楽しい!」

 完全教師という仮面が外れたように見える御仁は、あたしに良い笑顔をくれる。本当にムカつくな、この教師。

「こちとら本気で悩んでるっつーのに、テメェ」
「それが素か。まぁ怒るなって、ほれこれでも食え」

 個別包装されてるバウムクーヘンを渡されたので、もしゃもしゃと食った。それを見てまた笑っていたが、これ以上信用度は下がりようがないのでもういい。勝手に笑ってろや。

「学校でも家でも居場所がないんですよ、辛いんですよ、どうにかして下さい」
「それはもう相談じゃねぇな……まぁいいや、じゃあうち来るか?」
「は?」
「だから、うち」

 うち、と言って渡されたのは、家の鍵でした。
 とりあえず教育委員会、教師の適性を真剣に考えろ。
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