アルガドート・サーガ
 マドリードは小さく溜息をつくと、再び歩き出そうと足を踏み出しかけた。

「マドリード様!こちらにいらっしゃいましたか」

軽やかな足音と共に、薄紫の髪がマドリードの視界の端に飛び込んできた。

「まぁ、リペア。またそんなところから」

別段驚きもせず、マドリードはのんびりと声のほうを振り返る。

 其処には、マドリードよりも若いであろう、身軽な服に身を包んだ女性が立っていた。
リペアと呼ばれた女性は微笑むと、恭しく頭を垂れた。

「これは失礼致しました。マドリード様、ご報告があってお探ししていたのです」

「何かしら」

きょとんとした顔でマドリードはリペアを見つめる。
リペアはマドリードを見つめると、困ったように眉根を寄せた。

「実は……このような事は、本来マドリード様のお手を煩わせる事ではないのですが。
今はダリス様もいらっしゃいませんし、お知恵を貸して頂きたく」

リペアは一度言葉を切ると、少し思案するように視線をさ迷わせた。

「……まずは、見ていただけたらと思います。ついてきて頂けますか?」

マドリードは頷くと、歩き出したリペアの後を追った。
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