アルガドート・サーガ
マドリードが案内されたのは、リペアに個人的に宛がわれた個室だった。
整然と―…といえば、聞こえがいいが、寂しすぎるほど彼女の私物のすくない自室といえた。
そこに、見慣れない少女がベッドに横たえられていた。
森の木々のように美しい緑の髪が印象的で、少女を見たとき、マドリードは何か言い知れぬ気持ちが胸中に溢れ出るのを感じた。
「マドリード様、この者のことなのです。実は、一般の者が立ち入れない聖域の、姫巫女の棺、で発見されまして……」
「まぁ……」
姫巫女の棺、というのは、ここアルガドートに安置されている古の姫巫女が弔われたと云われる石棺のことである。
美しい女神のレリーフがあしらわれており、気の遠くなるような永い時間を経ても尚、一切老朽化することのない不思議なものだ。
そのフロアは、神殿内でも限られた者しか立ち入ることが出来ず、その結界を破ることができるのはマドリードの血縁者か、特別なアイテムを身につけているものだけなのだ。
その場にこの少女が居た、ということは、即ち。
「何者かが、結界を破る神具をこの少女に手渡したのでしょうか」
「どうかしら。ただ、この方からは少し不思議な力を感じるのです」
マドリードが不思議そうに少女を見つめながら呟いた。
リペアは神妙な面持ちのままマドリードを見つめる。
「この少女を発見した者には、口止めしてあります。しばらくは、私の親類、ということで話を通しておこうと思いますが……」
「そうね、彼女の目が覚めるまではその様にしましょうか。ねぇ、リペア。私…・・・あら?」
マドリードが何か言いかけたとき、件の少女の瞼が僅かに震え、その双眸がゆっくりと開かれた。
薄紫の、まるでアメジストのような瞳が不思議そうにマドリードとリペアを見つめる。
マドリードは微笑むと、少女の傍にゆっくりと近寄った。
「おはようございます、私はマドリードと申します。貴女のお名前は?」
つとめて優しく、少女に問いかける。
整然と―…といえば、聞こえがいいが、寂しすぎるほど彼女の私物のすくない自室といえた。
そこに、見慣れない少女がベッドに横たえられていた。
森の木々のように美しい緑の髪が印象的で、少女を見たとき、マドリードは何か言い知れぬ気持ちが胸中に溢れ出るのを感じた。
「マドリード様、この者のことなのです。実は、一般の者が立ち入れない聖域の、姫巫女の棺、で発見されまして……」
「まぁ……」
姫巫女の棺、というのは、ここアルガドートに安置されている古の姫巫女が弔われたと云われる石棺のことである。
美しい女神のレリーフがあしらわれており、気の遠くなるような永い時間を経ても尚、一切老朽化することのない不思議なものだ。
そのフロアは、神殿内でも限られた者しか立ち入ることが出来ず、その結界を破ることができるのはマドリードの血縁者か、特別なアイテムを身につけているものだけなのだ。
その場にこの少女が居た、ということは、即ち。
「何者かが、結界を破る神具をこの少女に手渡したのでしょうか」
「どうかしら。ただ、この方からは少し不思議な力を感じるのです」
マドリードが不思議そうに少女を見つめながら呟いた。
リペアは神妙な面持ちのままマドリードを見つめる。
「この少女を発見した者には、口止めしてあります。しばらくは、私の親類、ということで話を通しておこうと思いますが……」
「そうね、彼女の目が覚めるまではその様にしましょうか。ねぇ、リペア。私…・・・あら?」
マドリードが何か言いかけたとき、件の少女の瞼が僅かに震え、その双眸がゆっくりと開かれた。
薄紫の、まるでアメジストのような瞳が不思議そうにマドリードとリペアを見つめる。
マドリードは微笑むと、少女の傍にゆっくりと近寄った。
「おはようございます、私はマドリードと申します。貴女のお名前は?」
つとめて優しく、少女に問いかける。