アルガドート・サーガ
少女は不安げにマドリードを見詰めると、小さく首を横に振った。

「ええと…私、ゆ、ら」

「え?」

「ユラ・アルナーン。カルティアの姫巫女よ」

「え…っと、アナタね。カルティアは、もう……」

リペアが戸惑いを隠すこともせずに呟きかける。
マドリードは暫く少女、ユラを見つめていたが、すぐに小さく頷くと微笑んだ。

「ユラさん、とおっしゃるのですか。私は、アルガドート神聖国の現教皇を務めさせて頂いております。マドリード・フェイ・アルガドートと申します」

「あるがどーと?」

ユラは小さく首をかしげると、マドリードを見つめた。
マドリードはユラの首に下がるペンダントに目を留めると、確信したように頷いた。

「あぁ、奇跡ですわ。まさか、私の代で世界の希望、古の姫巫女に出会えるなんて」

「マドリード様、私には何がなんだか……」

リペアは困惑したままマドリードとユラを交互に見つめている。

「見てみなさい、リペア。ユラさんのペンダントは、今では違うものですけれど。
今から3000年ほど前の女神です。それが一切風化することなく残っているのです」

「それじゃあ……」

リペアはますます狼狽すると、ユラを恐る恐る見つめた。
ユラはにこりと笑うと、リペアに手を差し出した。

「あなたが私を助けてくれたのね、ありがとう。なんだか、とても永い間眠っていたみたい。
少し記憶が混濁しているから、思い出すまでに時間がかかってしまうかもしれないけれど……よろしくね。ええと」

「あ、ええと。リペア・マッケンジーです。ユラ様」

「様、なんて堅苦しいのは無しでいいよ、リペア」
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