アルガドート・サーガ
つまり、アルガドートの代表であるマドリードが、このユラ・アルナーンという少女を古の姫巫女と認めるということ。
それは、世界がそう認めるということだ。
ユラは少し面食らって喉に詰まった焼き菓子を紅茶で流し込んだ。

「あ、あなたって……時々とっても行動的ね。それで、あなたの立場は大丈夫なの?」

 ここ数日間、リペアと朝夕顔を合わせる中で、マドリードが置かれている立場をユラも聞かされていた。
マドリードの実の姉が、長老派とよばれる派閥に無理やり退陣させられたこと(理由まではわからないとのことだが)
長老派は、直系の家系であるマドリードよりも、神官として経験の豊富なラダムス・ジュリルが教皇になるべきだ、という思想だということなどだ。
それを踏まえての、ユラのこの言葉なのだが、マドリードはにこりと笑うと首を横に振った。

「私は大丈夫です。こうやって、私を本当に想って下さる方たちがいるので」

「そう……。私は大丈夫よ」

ユラはにこりと笑うと頷いた。
 その時、控えめなノックが部屋に響いた。
マドリードが小さく返事を返すと、扉の向こうから男性の声が返ってきた。

「失礼します」

「まぁ、ダリスね」

マドリードは立ち上がると、ドアの近くまで歩み寄った。
ドアがゆっくりと開くと、その向こうに二人の人物の姿があった。
一人は、優しげな面差しの茶髪の青年で、もう一人は少し軟派な印象を与える銀髪の青年。

「お帰りなさい、ダリス、それにハロルドも。ご苦労様」

「ただいま戻りました。無事に親書は届けて参りましたので」

「道中寒かったぞ。そしてここは相変わらず暑いな」

ダリスとハロルドは各々マドリードと言葉を交わすと、ほぼ同タイミングでユラを見た。
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