オリゾン・グリーズ
黒い塊はスッと立ち上がると、マントに付着したガラスの破片を手で払い落した。
手袋をしているから、危なくはないのだろう。
フードを取り外したその姿は、真っ赤に燃えるような赤い短髪を乱暴に靡かせ、小柄で痩せた体つきがマントからちらりと見えている。
黒目がちな幼い両目がギッとノエルを睨むと、途端に罵倒を始めた。
「この役立たず!
本を見つけたらとりあえず戻ってこいって言っただろうが、タコ!」
「タコはないでしょタコは!
俺このカタブツさんに捕まって拷問スレスレの怖ーい事情聴取されて怖かったんだからね!」
「だからね!とかいうなこの女男!」
「それ今日二回目なんだけど、俺ってそんなに可愛いの?」
「気持ち悪いこと言ってんじゃねえ!」
「ぐぼあっ!」
問答無用で殴られるも、縛られたままのノエルには抵抗も反撃もしようがなかった。
なんか段々哀れになってくる扱いに、というかその登場の仕方にクリストハルトは茫然としたままである。