オリゾン・グリーズ
「でもなんにせよ、生きてるって聞いてうれしいだろうね、彼は」
「…………」
なんでもないように言ったノエルの言葉に目を見張り、ローラントはそっと隣を振り返った。
彼は、まだ短針の錆を弄んでいる。
「そういうものか」
「そういうものだよ。
どんな形にせよ身内には生きていてほしいって、命があるとわかっただけで、嬉しくてたまらないよ」
「そうか……」
ローラントは再びマントに身を埋めた。
「ロランはそういうのに疎いもんね」
「経験がないもんでな」
「これから解ってくれればいいんだよ」
「…そんな必要、俺には無いぜ」
「……………」
ノエルは手にしたレンガの破片を、できるだけ遠くに投げ飛ばした。