オリゾン・グリーズ



街の大きな時計台を見上げると、時刻は午後5時を過ぎていた。



騎士団は深夜に集合、出発予定であるから、まだ時間はある。



持っていく荷物など、そもそも自分の持ち物など粗末なものばかりだし、特に身につけておきたいほど名残のある代物もなかった。



持参を命じられた物は比較的かさばらず、荷造りにも手間はかかるまい。




さて、これから集合時間までどうしようか。




家には帰る気にはならないから、ここはどこか静かなところで時間を待つことにしよう。



顔馴染みの店に居座っては、いろんな人に激励を送られてかなわないからだ。




そうだ、時計台の近くに人の少ない図書館があった。



クリストハルトは父と違い、書物に目を通すのは苦手であったから図書館などは足を踏み入れたこともないが、この際父の著作物を一度見てやろうではないか。




ラムルの研究局から資金を援助されているくらいだから、さぞや有難い書物なのだろう、きっと。





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