オリゾン・グリーズ



【2】



夕方の不審者の、物騒な予言のせいで騎士団召集員のお偉方はすっかり気がたっていた。



おかげで募った騎士全員が持ち慣れない武器を持たされることになり、夜中の移動で神経を張り詰めなければならないものを、さらにその緊張の糸が張る。



昼間、気が立ったお偉方が戻ってきたころには、すでにステンドガラスが割られ椅子に結んだ縄が切り裂かれ、若者が一人茫然と立ち尽くしているのみであった。



かなり厳しい叱責を受け、すでに一団の中でクリストハルトの信用はガタ落ちである。



狭い街だから、クリストハルトが不審者を取り逃がしたことはすぐに噂となって広まるだろう。



父に申し訳ないことをした。



叱責の嵐を食らいながら、反省すべきはそれだけであった。




「まったく、あの餓鬼さえ押さえて襲撃を食い止めれば、儂も君も騎士団で名を上げることができたというに」



「すみません」



そんなことで名が挙がるか。



名声と金ばかりに興味のある召集員の頭は、黒々とした口髭をしきりに撫で付けながらクリストハルトに文句を言い続けた。



執拗でいい気のしない男である。





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