野良猫 lovesong 1

『ごめんなさい…』

あたしを自殺に追い込んだ苦痛。
その苦痛をあたしが
人に与えてしまった。

『ごめんなさい！』

何回誤っても足りない…。
頭を下げるあたしに

「痛くねぇ…。」

もう微笑んではいないけど
まだ優しい瞳のままの男。

人の優しさってのを久し振りに感じた。
それと一緒に頬に温かいものが流れた。

これは……なに？

次々と流れ落ちるものに戸惑った。

「なに泣いてんだよ…。」

スッと男の手が伸びてきて
あたしの頬を親指で強引に拭った。

………泣いてる？
あたしが………？

『…えッ？』

そう言って口を開いたとき
広がったしょっぱい味。

久し振りの感覚。

驚き、目を丸くするあたし。
それを見て男は気まずそうに
顔をしかめたけれど、グシャグシャッと
あたしの頭を撫でてくれた。

不器用な優しさが心に染みる。
その男の手は重くて、乱暴で…。
でも、心地よい。

『あ…りが……と………。』

泣きすぎて、途切れ途切れの言葉を
笑うのではなく、「……あぁ。」と
小さく頷いた男。

温かい……。

あたしはゆっくり目を閉じた。
緊張の糸がプツンッと切れて
眠りについた。

一生の"眠り"ではない
穏やかな眠りに…………。