君のいる世界

「ふふふ」


「な、何ですか？」


「なんだか嬉しくて」


「嬉しい？」



今の会話の中に嬉しい要素なんてあっただろうか。


よく意味がわからず、首を傾げる。
すると、山下さんは一間おいて穏やかな笑みを浮かべた。



「最近の谷本さん、徐々にだけど私に素を見せてくれてるから。気付いてる？さっき、会長のこと“あいつ”って言ってたわよ」



「え！？私、そんなこと言ってた！？」



学園では、“お嬢様”として振舞ってる私。
言葉遣いや言動には細心の注意を払ってる。


そんな私が、まさか“あいつ”だなんて言葉を使うとは誰も思わないだろう。



「私は素の谷本さんの方が好きよ。いつもの“お嬢様の谷本さん”より人間味があって、可愛らしくて」



人間味があるとか、素の私の方がいいだなんて…


そんなこと、初めて言われた。