君のいる世界
麗奈は見送りに来なかった。
心配になった俺は部屋に様子を見に行った。
ーーーーーコンコン。
「麗奈?入るぞ?」
部屋は厚手のカーテンが閉まっていて暗く、鼻を啜る音と嗚咽が聞こえる。
俺はベッドの端に腰を掛け、布団を頭まで被り震えている麗奈の背中にそっと手を置いた。
「麗奈…」
「…っ…も、もう…ひっく…おがあ、さんに…っ、会うなって…おっ…おばあちゃんが……カーテンも…閉めろ…って…」
そうか、だから見送りに来なかったんだ。
窓からも見えないようにカーテンを締め切られて、こんな暗い部屋に一人閉じ込められてたのか…
あのお祖母様ならやりそうなことだな…
「こぅ…君…ひっく…お母さんは…わ、私のこと嫌い…っなのかなぁ…」
麗奈の涙で掠れた声が頭に響く。
ズキッと心に矢が刺さったように痛い…
「だから…私をおいて行…っ、行っちゃったの…?」
まだ9歳の麗奈には最も辛く酷な現実…
出窓には幸せそうに映る家族三人の写真が、クローバーのガラス細工が散りばめられた可愛らしい写真たてに今もなお飾られていた。