君のいる世界




確かあの写真は今年の春、久しぶりに家族旅行をした時に撮った写真で。


写真たてもその時に買ってもらったやつだと満面の笑みで話してくれたっけ。




もうこの旅行の時には離婚の話し合いが行われていたのだろうか…


最後の家族旅行だとは知らない麗奈の純粋無垢な笑顔が、今日は妙に痛々しい。




「おばさんが麗奈のこと嫌いなわけないだろう?…おばさんは世界で一番、麗奈の幸せを願ってる」



俺は無力だ。


こんな時、ありきたりなことしか言えない自分が腹立たしかった。




「私…もう、お母さんに会えないの…?」



俺は迷った。


会えるかどうかなんて、正直な所わからない。


裁判で今後一切会うなってことになってるかもしれないし、そうじゃなくてもあのお祖母様なら会わせないようにするだろう。


谷本財閥の名があれば、それぐらいのことは簡単に出来る。


会えるだなんて不確実なことを無責任に口にしていいのか。


期待して会えなかった時、麗奈は傷付いてしまうんじゃないか。




だけど、布団から顔を出した麗奈を見て「わからない」だなんて酷なことを俺には言えなかった。


今はこれ以上、辛い思いをさせたくなかった。




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