君のいる世界
だって、周りの人達は私が演じてるなんて全然気付かない。
演じてようがどんな私であろうが、周りからしたらそんなこと関係ない。
私が谷本の娘で、谷本に胡麻さえ擦れればそれでいいのだから。
私の存在価値なんて、その程度なんだ。
その証拠に、親戚や父親でさえも私のことなんてどうでもいいと思ってる。
初等部で一緒に遊んでた友達は、中等部に上がった途端、私に対して余所余所しくなった。
何も考えず無邪気に遊んでたあの頃とは違って、大人の事情や人間のイヤらしさが出てきて。
急に胡麻を擦ってきたり、敬語を使ってきたり。
あの頃、まだ純粋だった幼い私。
初めて人の汚い部分を見た時、自分の置かれた立場に気付いて、絶望したのを覚えている。
同時に“谷本財閥の社長令嬢”という肩書きが疎ましく思ったんだ。
それから周りとは距離を置くようになって、気付いたら誰もいなくなってた。