君のいる世界




山下さんとは会話はするものの、やっぱり一定の距離を保っていた。


彼女は他の人とは違う。
谷本に胡麻を擦るようなことも、媚びたりすることもない。


そもそも、私と同じように周りと距離を置いてるようにも見える。



山下さんとなら友達に…
本当の友達になれるかもしれない。



だけど、そう思う一方でいつも心にブレーキを掛けてしまう。



「おはようございます!父がお父様に宜しくと申しておりました」



「麗奈さん。今日のランチ、一緒にどうですか?」



初等部の頃にずっと一緒にいた二人が欲望や野望で目をギラギラ輝かせながら話し掛けてくる。


顔に油性の太いマジックで【お金】って書いてあるかのように二人の心は透けていて。




そうだよ…


簡単に人を信用しちゃいけないって、散々身に染みて学んできたじゃない。


山下さんだって、その胸の内に何を秘めているかなんてわからない。


人はいくらでも、お金や地位の為なら嘘をつけるものなんだから。




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