君のいる世界
「あ…佳菜子ぉ〜…おはよ」
私は初めての満員電車で疲れ果て、力無く手を振った。
「どうしたの?電車で通学なんて」
佳菜子は人混みで乱れた髪を整えながら爽やかな笑顔を向けた。
「ん〜?…いや、電車で通学してみたくて」
昨日の事をなんて説明したらいいかわからなくて、私は咄嗟に誤魔化して視線を逸らした。
佳菜子に相談したい。
だけど思い出すだけで胸が締め付けられて、康君が触れた首筋や鎖骨が疼く。
「ふふふ。電車で通学してみたいだなんて変わってるわね。車の方が楽なのに」
「ホント!噂では聞いてたけどまさかこんなに凄いとは思ってなかったよ。佳菜子は毎朝これで通学してるなんて凄い」
「慣れよ、慣れ!」
私は元気そうな佳菜子の姿を見てホッと胸を撫で下ろした。
昨日あんなことがあったから心配していたんだけど。
叩かれた頬もそんなに腫れてはいないようだし本当に良かった。