君のいる世界




バサッ!と何かが落ちる音がして、私は身体をビクッと強張らせた。



も、もしかして、起きた…?



恐る恐る振り返ると、ソファの脇に新聞が落ちているだけで、会長はビクともしていない。


それどころか、耳を澄ますと寝息すら聞こえてくる。



「はぁ…」



なんだ、新聞が落ちただけか。
もう…驚かせないでよ…



会長が起きていない事にホッと息を吐くと、足音を立てないようにソファに近付き新聞を拾う。


そしてソファの前にあるテーブルにそれを置くと、その場にしゃがんで何気なく会長の顔を覗いた。



「ふふふ。可愛い寝顔しちゃって。いっその事ずっと寝てればいいのに」




ほんの少し開いた口が何だか可愛くて、思わず笑ってしまう。


会長をまじまじと見たのは初めてだけど、本当に綺麗な顔してる。



「うわー…睫毛長い…肌も綺麗だし」



眉目秀麗って言葉が会長の為に作られたかのようにぴったりで、その美しさが羨ましくさえ思える。



< 16 / 497 >

この作品をシェア

pagetop