君のいる世界
バサッ!と何かが落ちる音がして、私は身体をビクッと強張らせた。
も、もしかして、起きた…?
恐る恐る振り返ると、ソファの脇に新聞が落ちているだけで、会長はビクともしていない。
それどころか、耳を澄ますと寝息すら聞こえてくる。
「はぁ…」
なんだ、新聞が落ちただけか。
もう…驚かせないでよ…
会長が起きていない事にホッと息を吐くと、足音を立てないようにソファに近付き新聞を拾う。
そしてソファの前にあるテーブルにそれを置くと、その場にしゃがんで何気なく会長の顔を覗いた。
「ふふふ。可愛い寝顔しちゃって。いっその事ずっと寝てればいいのに」
ほんの少し開いた口が何だか可愛くて、思わず笑ってしまう。
会長をまじまじと見たのは初めてだけど、本当に綺麗な顔してる。
「うわー…睫毛長い…肌も綺麗だし」
眉目秀麗って言葉が会長の為に作られたかのようにぴったりで、その美しさが羨ましくさえ思える。