君のいる世界
ブーブーブー…
腿の上に置いた鞄の底が小刻みに震え出した。
鞄のチャックを開けて中からその元凶を取り出すと、ライトがカメレオンのように色を変えながら光っている。
画面には康君の名前と数字が並び、“着信中”の文字が点滅している。
「……」
どうしよう。
もう私が学園にいないことがバレたのかな…?
親指を通話ボタンの上で彷徨わせながら電話に出るか悩んでいると、会長にヒョイッとそれを取られてしまった。
「…っあ…」
会長は私の携帯の電源を切って私の鞄の奥底に沈めた。
「でも…」
「…それとも、帰るか?」
会長の真っ直ぐな瞳が私の目を捉える。
何を思っているのか、全く読み取れない。