君のいる世界
一人にさせて
「うわぁー!!海だ!」
電車に揺られること40分、私達は地元から一番近い海岸に来ていた。
この海岸は夏場になると沢山の海水浴客で賑わい、海の家や屋台が数多く出店する。
今はまだ時期じゃないだけに人はまばらで、サーフィンを楽しむ数人と散歩をしている老夫婦だけだった。
「ねえ!海入ろうよ!」
「は?まだ海水冷たいだろ…」
「いいからいいから!」
私は砂浜に鞄を置いて靴と靴下を脱ぎ、ブレザーとワイシャツの袖を捲り上げながら海に向かって走った。
貝殻の破片が素足の裏に刺さってチクチクと痛むけど全然気にならない。
「…ひゃっ!!冷た!!」
波は穏やかに寄せては返しを繰り返し、その波に乗って流れて来た砂や小石が足を擽る。
「だから言ったろ。まだ冷たいって」
会長は靴を履いたまま波が届かないギリギリの場所で、ポケットに手を突っ込みながら苦笑いを浮かべている。
「冷たいけど慣れたら気持ちいいよ?」
私はわざと軽く水しぶきが上がるように右足をバタつかせた。