君のいる世界
バイオリンや華道、茶道、テーブルマナー、時には歩き方や笑い方までも上品で清楚に振る舞えるように習い事尽くしの毎日。
勿論ドラマやバラエティー番組などのテレビを見る事も漫画を読む事も許されなかった。
それが私には窮屈で辛くて、何度枕を濡らしたかわからない。
祖母が怒るのは私がいけない事をしているからで、私が言う通りにしていれば笑って頭を撫でて褒めてくれる。
まだ小学生だった私はそんな風に思ってた。
だけど、テストで満点を取ってもバイオリンのコンテストで優勝しても褒められることはなくなった。
“谷本家の一員なんだから当たり前でしょ?”
そう言わんばかりの目で軽くあしらわれた。
次第に私自身もそれが当たり前になって感情を持たなくなり、いつしか“本来の私”を見失ってしまった。
そうして私はいつの間にか操り人形のように、絡まる糸で身動きが取れなくなっていた。
私はきっと一生谷本家の操り人形のまま…
だけど本当はもがけばもがく程絡まっていく糸の中で、いつかこの糸を切って助け出してくれる誰かが現れるのをずっと待ってたんだ。