君のいる世界
「もう高校生か…こんなにも立派になって…お父さんも喜んでる」
「…何しに来たんですか」
さっきまでとは違う、会長の低く冷たい声に心臓がドキッと跳ね上がった。
隣りに立つ会長を恐る恐る見ると、鋭く射るような目で父親を睨みつけている。
その拳は小刻みに震えていた。
「帰って下さい」
「…大輝君……」
「帰れって言ってんだよっ!!!」
静まり返った霊園に会長の怒声が響いた。
私は首をすくめ、持っていた鞄の紐をギュッと握り締める。
重い空気が三人の間に漂う。
数秒の沈黙が途轍もなく長く感じた。
会長は自分の荷物と桶を持って、私も父親も見ずに石段を降りて行く。
大きくて暖かい背中が、泣いてるように見えた。
今追い掛けないと、もう会長が笑ってくれない気がする…
そんなの嫌だよ…
「…っ、待って」
「麗奈!」
私を呼ぶ父親を無視して、私は会長を追い掛けた。