君のいる世界
「大輝君、今バイトの帰り?」
地元に着き、駅前の商店街を歩いていると後ろから声を掛けられた。
「こんばんは。今日はバイトじゃないですよ」
「あ、わかった。デートでしょ?大輝君かっこいいから女の子が放っておかないわよね!」
この人は商店街にある地元で大人気の弁当屋の店長。
客からも従業員からも朱美さんって呼ばれて慕われている。
俺もここの唐揚げ弁当が好きで週に2、3回通ううちに朱美さんと親しくなった。
俺と同い年の子供がいるらしいけど、そんな歳には見えない。
若くて綺麗で、この前常連客が朱美さんのことをマドンナって呼んでるのを聞いた。
「違いますって。…今日、月命日なんで」
朱美さんは俺の親父が事故で他界したこと、毎月月命日に墓参りに行くことを知っている。
いつもなら親父のことは誰にも言わないのに、何故か朱美さんには話してしまった。
聞き上手というか、話しやすいというか…
なんとなく朱美さんが纏う空気が親父に似てるからかもしれない。