君のいる世界
どうしてこんなにあいつのことを考えてしまうのか。
どうしてこんなに心臓が鷲掴みにされてるように苦しいのか。
もうその答えに俺は気付いてる。
だけど、あいつだけは駄目なんだ…
「それじゃ、俺はこれで」
「うん。気を付けて帰ってね」
俺は一刻も早く頭の中を整理したくて、朱美さんに会釈をし背を向けて歩き出した。
「あ、大輝君ちょっと待って!」
大声で呼び止められ振り返ると、朱美さんがパタパタと足音を鳴らしながら駆け寄ってくる。
「そういえば琴音ちゃん、バイト先見つかった?」
以前、谷本麗奈から聞いた事を朱美さんにも話していた。
朱美さんはあれから琴音を心配してくれて、会う度にこうして気に掛けてくれる。
「いえ、まだみたいです」
高校一年だということと今は試験週間に入ってしまってなかなか決まらない、と昨日ぼやいてた。