君のいる世界




「お兄ちゃーん!お帰り!!」



玄関を開けると、すぐに大和が駆け寄って俺の足に抱き付いてきた。




「ただいま。大和、もう寝る時間じゃないのか?」



「お兄ちゃん待ってたのー!今日はお父さんの大好きなカレーライスだよ!」



満面の笑みでそう言う大和を見て、ズキっと胸に痛みが走った。


大和は数ヶ月の時に親父が死んでるから全く思い出がない。


大和からお父さんって言葉が出る度に、あの日の事を思い出し憎しみが募って行く。


あの事故さえなければ、大和は親父とキャッチボールだって海にだって行けたのに…




俺は大和の頭を撫でた後、靴を脱いで家に上がった。


そして、俺を見上げながら両手を上げている大和の脇の下を掴んで抱き上げた。




「重くなったなー!」



「もう5歳だもん!!大人だもん!」



「大人はこんな風に抱っこされないぞー?」



大和は「いいの!」と言って白い歯を合わせニヒヒと笑った。





「あら、お帰り。ご飯食べるでしょ?」



「ああ、食べる。…母さん、琴音は?」



「試験前だから二階で勉強してるわよ。大輝、疲れてる所悪いんだけど春音を布団に運んでくれる?」



俺は大和を降ろし、テレビの前で寝てる春音の顔を覗き込んだ。




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