君のいる世界
「トミさん…どうしてお母さんは私を迎えに来てくれないのかな…?」
「…麗奈さん?」
「私…お母さんに…会いたい」
ずっと思ってた。
どうして会いにきてくれないの?
どうして迎えにきてくれないの?
私のこと忘れちゃったの?
もう…私のこと嫌いになっちゃったの?
まだ小学生の頃、部屋の窓から家の門をずっと眺めてた。
いつかあの門を開いてお母さんが来てくれる、私をここから連れ出してくれる。
そう信じて…
だけど数日経っても、数ヶ月、数年待ってもお母さんは来てくれなくて。
いつしかお母さんへの想いを心の奥底に沈めた。
その夜、久しぶりに家族の夢を見た。
このただ無駄に広い豪邸じゃなくて、普通の一軒家。
食卓には熱々のお鍋とお母さんの得意料理の肉じゃがや生姜焼きが並び、それを父親と私が和気あいあいと囲んでいる。
対面式のキッチンでは私達のことを目を細め優しい笑顔で見つめるお母さんがいた。
幸せな家族の姿。
ふと夜中目が覚めると、目尻から一筋の涙が零れ枕を濡らしていた。