君のいる世界
ーーーーーーガチャ。
突然屋上の扉が開いた音に驚き、咄嗟に後ろを振り返る。
普段誰も来ないのに、一体誰?
まさかあいつが追い掛けてきたとか?
ごくっと喉を鳴らし開いた扉を凝視すると、山下さんが顔を覗かせた。
そして私を見た途端に目をまん丸く見開いてハッと息を呑む。
「大変…!!これ使って?」
そう言って制服のポケットから真っ白いハンカチを取り出した。
「え…?どうしてハンカチ?」
「だって谷本さん、泣いてる…」
私はそっと頬を触った。
指に染みる冷たい涙。
全然、気付かなかった…
「何かあった…?」
山下さんは、私の顔を窺いながら恐る恐る聞いてくる。
「…生徒会室から走って出て行くのを見たから。生徒会室には中澤さんがいたけど、聞いても“別に”しか言わな……「「あいつの話はやめて!!!」」
一番聞きたくないあいつの名前が出た瞬間、頭に血が登り気付いたら大声を上げていた。