君のいる世界
顔を洗い、まだ少しクリーニング店の独特な匂いがする制服に袖を通す。
昨日海で濡れた制服からは、微かに潮の香りがして、楽しくて幸せだった海岸での甘酸っぱい思い出が蘇ってくる。
それだけで胸が張り裂けそうなぐらいドキドキして、私の頭の中は会長でいっぱいになった。
いつもより少し早くダイニングに行くと、コーヒー片手に新聞を広げた父親の姿があった。
私は挨拶も目も合わせず、長いテーブルの父親から一番遠い席に腰を下ろす。
父親も何も話し掛けて来ない。
直様運ばれて来た朝食は、いつもと変わらずイタリア料理。
前菜を見るだけで溜息が零れた。
私は食パンとコーヒー、それとヨーグルトかちょっとしたフルーツがあれば十分なのに…
だけど朝早くから準備してくれてる料理人を思うと、そんなこと言えない。
私はナプキンを膝の上に広げて、マナー通りに食事を始めた。